
こんにちは、フロントエンド開発のY.O.です。
フロントエンドの業務に携わるようになって4年目になりますが、なんとなくの理解で日々の開発をやり過ごしているものの一つにビルドツールがあります。 フロントエンドのビルドツールは種類がたくさんあり、複雑で混乱しがちですよね。
そこで今回は私の認識の整理や備忘録も兼ねてフロントエンドのビルドツールについて書かせていただきます。 正直この話は類似のもっと良くまとまった記事がたくさんあり、内容もほぼほぼ被っています。 自分の理解のために書くので、それでも良い方はお付き合いください。
ビルドツールがなぜ必要か
昔々のWebは「HTML + CSS + JavaScript をそのままブラウザに送れば動く」シンプルな仕組みでした。
しかしフロントエンドが進化するにつれ、次のような課題が生まれました。
JavaScriptの巨大化
現代のWebアプリはSPAやSSRが一般的になり、それを実現するために依存関係が爆発的に増えています。
React本体 UIライブラリ 状態管理 ユーティリティ 日付ライブラリ アイコンセット
これらをそのままブラウザで読み込むと通信コストが大きく、ページが重くなるという問題が発生します。
そこでビルドツールは主に以下を行い、JavaScriptを軽量化します。
- Tree-shaking(未使用コード削除)
- Minify(圧縮)
- 変数名を短く
- 空白削除
- コードスプリッティング(分割)
- 動的 import を分割する
- 初期ロード軽減
ブラウザがTypeScriptやJSXを理解できない
フロントエンドは現在、素のJavaScriptだけで書かれることは少なくなってきています。
- TypeScript
- JSX/TSX
- Sass/Less
- PostCSS
- 画像の変換/最適化(WebPなど)
しかし、ブラウザはこれらを直接読み込めませんので、ブラウザが理解できる形に変換する必要があります。 これをトランスパイルと呼びます。
モジュールシステムの差異(CommonJS / ESM)
JavaScript には歴史的経緯から複数のモジュール形式が存在します。
- Node.js → CommonJS(require)
- ブラウザ → ESM(import)
ビルドツールはこの差異を吸収し、統合されたコードを生成します。
パフォーマンス最適化が複雑すぎる
現代の高速化、最適化テクニックは非常に複雑です。
- Code Splitting
- Preload / Prefetch
- Tree-shaking
- Dead code elimination
- CSS 抽出
- Minify
- etc...
これらを手でやるのはほぼ不可能なので、ビルドツールが自動で行います。
開発体験(DX)の向上
ビルドツールは「開発サーバー」として動作するものもあります。
- HMR(Hot Module Replacement)
- ローカルサーバー起動
- APIモック
- JSX変換の高速化
- 環境変数の扱い
現代フロントエンドでは開発DX = 生産性なので、ビルドツールが必須になっています。
SSR / Edge Runtime / Server Components などの複雑化
今のフロントは、もはや「フロントだけ」ではありません。
- Next.jsのSSR
- RSC(React Server Components)
- Edge Functions
- Bun / Deno / Node.jsなどのランタイム
クライアント用とサーバー用のビルドを分離し最適化する必要があり、ビルドツールが欠かせなくなっています。
現代フロントエンドは“ビルド前提”で成り立っている
昔の Web → 生JavaScriptでOK
今の Web → TypeScript / JSX / 数百の依存 / 最適化 / 画像変換 / SSR…
これらを処理するために、ビルドツールは必須のものとなりました。
ビルドツールの主機能
ビルドツールの主な機能は以下の通りです。
- トランスパイル(TypeScript / JSX などを変換)
- バンドル(複数のファイルを1つにまとめる)
- 最適化
- Tree-shaking(未使用コードの削除)
- Minify(圧縮)
- コード分割(Code Splitting)
- 開発サーバー(HMR / ローカルサーバー起動 など)
- アセット管理(画像やCSSの変換・最適化 など)
- 環境変数管理
- プラグインシステム(拡張機能の追加)
ビルドツールの早見表
簡単に各ビルドツールの特徴を比較した表を以下に示します。 まだあるかとは思いますが、主要なものは網羅しているかと思います。
| ツール | HMR | 開発サーバー | 最適化(minify, tree-shake等) | バンドル | トランスパイル / コンパイル |
|---|---|---|---|---|---|
| Vite | ✔️(esbuild + HMR最適化) | ✔️ | ✔️(esbuild / Rollup) | ✔️(本番はRollup) | ✔️(esbuild / SWC / babel) |
| Webpack | ✔️ | ✔️ | ✔️(Terser, tree-shake) | ✔️(主用途) | ✔️(babel 等) |
| Rollup | △(プラグイン) | ❌(基本はビルドのみ) | ✔️(tree-shakeが強力) | ✔️ | △(babel / SWC プラグイン) |
| esbuild | △(開発サーバーはあるが簡易) | ✔️(簡易 dev server) | ✔️(高速 minify / tree-shake) | ✔️ | ✔️(TS/JSをGoで高速変換) |
| SWC | ❌ | ❌ | △(minify あり) | ❌ | ✔️(Rust製超高速トランスパイル) |
| Turbopack(Next.js 系) | ✔️(高速HMR) | ✔️(Next.js dev server) | ✔️ | ✔️ | ✔️(Rust製) |
| Rspack | ✔️ | ✔️ | ✔️ | ✔️(Webpack互換) | ✔️(Rust製) |
| Parcel | ✔️ | ✔️ | ✔️(自動最適化) | ✔️(no-config) | ✔️ |
| Snowpack(Viteの前身) | ✔️ | ✔️ | △(プラグイン) | △(バンドルは外部ツール) | ✔️ |
| Rome(現 ReScript/Biome 方向へ分裂) | ❌ | ❌ | ❌(最適化は開発中段階) | ❌ | ✔️(将来) |
| Browserify | ❌ | ❌ | △ | ✔️ | △ |
| Metro(React Native) | ✔️ | ✔️ | ✔️ | ✔️(RN用) | ✔️(babel) |
主要ビルドツールの紹介
ここではモダンなフロントエンド開発において代表的なビルドツールの特徴をまとめます。
Webpack
柔軟な老舗バンドラー。 最近はRspack等の後継が出てきていますが、大規模サービス、柔軟なカスタムが必要な現場ではまだまだ採用されそう。
◎ 長所
- 圧倒的な柔軟性
- プラグインエコシステムが成熟
- 巨大プロダクトの実績が多い
✕ 短所
- 設定が複雑になりやすい
- ビルドが遅め
esbuild
Go製のバンドラ。とにかく速い。
◎ 長所
- 圧倒的に速い
- 多くのツールの基盤となっている(Vite, tsup など)
✕ 短所
- 最適化の自由度は低い
- 設定の融通は効きにくい?
SWC
Next.jsでも採用されているRust 製トランスパイラ。
◎ 長所
- Babelより圧倒的に高速なトランスパイラ
✕ 短所
- プラグインエコシステムが未成熟
Rollup
ライブラリ向けの軽量・最適化バンドラー。 npmライブラリや軽量のESMの生成に最適です。
◎ 長所
- 軽量、シンプル、Tree-shakingが強い
✕ 短所
- 開発ツール弱い・大規模アプリ単体利用には不足 →大規模アプリではViteやフレームワークと組み合わせて使われることが多いですね。
Vite
爆速のHMRとシンプルな設定で、人気を博するツールです。 小〜中規模のSPAプロジェクトであれば、現状ではVite一択のイメージです。
◎ 長所
- HMRが爆速
- 設定がシンプル
- React / Vue / Svelteとの相性が良い
✕ 短所
- 最適化の処理によっては、開発時と本番時で動作が異なる可能性がある
Turbopack
Next.jsが推す、Rust製次世代バンドラー。
◎ 長所
- 高速なHMR
- Rust製で高性能
✕ 課題
- プラグインエコシステムが未成熟
- Next.js以外では現状扱いにくい
その他?
tsup
esbuild ベースでライブラリビルドに最適。
Rspack
Webpack 互換を維持しつつ高速化した Rust 実装のバンドラ。 「Webpack の速度が限界」という現場に刺さりそう。
ケース別のおすすめ
小〜中規模の SPA
→ Vite
SSRを使うReactアプリ
→ SWC / Turbopackを用いたNext.js等
npmライブラリをビルドしたい
→ Rollup / tsup
とにかく高速にしたい
→ esbuild / Rspack
既存の巨大プロジェクトで柔軟性が必要
→ Webpack or Rspack
まとめ
ビルドツールはただの裏方ではなく、開発体験やプロダクトの品質に大きく関わる存在です。今回の内容が、日々の開発にある小さな疑問を解消する助けになれば嬉しいです。
参考文献
findy-tools.io zenn.dev tech-lab.sios.jp qiita.com zenn.dev
おわりに
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